東京高等裁判所 昭和40年(行ケ)16号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決を取り消すべき事由として、本件審決は、(一)本件登録実用新案出願当時の引用例の構造を誤認したものであること及び(二)(予備的主張として)本件考案は引用例と構成及び作用効果を異にし、引用例から容易に想到しうるものとしたことが誤りであることを主張するが、原告の右主張は、いずれも理由がないものといわざるをえない。すなわち、まず、
(一) 本件出願当時の引用例の構成について。
本件審判手続当時における引用例の構造が本件審決認定のとおりであることは原告の認めて争わないところであり<証拠>を総合すると、引用例は、本件登録実用新案の登録出願前である昭和三十年七月二十二日(本件登録実用新案は昭和三十一年七月二十五日登録出願されたものである)、東京都品川区上大崎長者丸所在の国立予防衛生研究所に備え付けられた当時から本件審判手続当時まで、その投映目盛盤の構造に関する限り格別の変更はなく、したがつて、備付の当初から審決認定のとおりの構造であつた事実を認めうべく、他にこれを左右するに足る適確な証拠はない。原告は、右の事実を強く争い、引用例は備付後の修理に際し、審決認定のような構造に変えられたものである旨主張するが、原告の挙示援用するすべての証拠資料によるも、引用例は右国立予防衛生研究所に備え付けられたのち修理を施された事実のあることは肯認しえないではないが、原告の主張するように、その修理の際、投映目盛盤が逆にされた事実は到底これを肯認することはできない(原告本人の供述すら推測の域を出ない)。
(二) 構成及び作用効果の点について。
引用例の構造が本件審決認定のとおりであることは、前認定のとおりであり、これと当事者間に争いのない本件登録実用新案の要旨及びその作用効果とを本件実用新案公報を参酌して対比考量すると、本件審決認定のとおり、まず、その構造において、(1)直交截断される投映目盛線は、本件登録実用新案においては主尺目盛線であるに対し、引用例においては幅尺目盛線であること及び(2)不透明側に刻設される目盛線は、本件登録実用新案においては幅尺目盛線であるに対し、引用例にあつては主尺目盛線であること、したがつて、その効果の点において、本件登録実用新案は主尺目盛線と幅尺目盛線とが合致した場合に透光して輝き、換言すれば、「透輝化」することにおいて合致線を検知するに対し、引用例は、「暗黒化」することにより、これを検知するものである点において相違するが、他の点においては技術的に全く異なるところはないことを認定しうべく、他に右認定を左右するに足る証拠はない。この点につき原告は、本件登録実用新案においては幅尺目盛の設定が引用例に比し容易である旨主張するが、仮に原告主張のような効果があるとしても、いまだ程度の差という範囲を出でず、特段の作用効果と目するに足りないといわざるをえない。しかして、投映目盛盤は、本件審決も説示するように、幅尺のみを単独で使用するものでなく、投映主尺との相関関係において使用されるものであることはその構成に徴し明らかなところであるから、それらの透明、不透明の差異は、その作用効果として「透輝化」と「暗黒化」の相違をもたらし、したがつて、他の諸条件と相まち観察に若干の差異を生ずることがあるとはいえ、光学的重畳相殺の効果という観点からすれば、具体的な技術的思想として、とくに異なるところはないものと認めるのが相当である。この点に関する原告の主張は、本件登録実用新案の実施品と引用例との具体的構造及びそれぞれのもたらす実際的効果の差異を微細に論議するにとどまり、両者のもつ考案、すなわち、その構造に表現された具体的技術思想の認識把握に欠けるものであり、もとより採用しうる限りではない。
(むすび)
三 以上説示のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法あることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、当を得ないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
(三宅正雄 石沢健 滝川叡一)